自営業をしています。お葬式でのエピソードは、今年亡くなった父についてお話をしたいと思います。父が亡くなる寸前に、不思議な体験をたくさん経験したのを今でも覚えています。例えば、なくなる2週間前に動かなくなった腕時計のことをしきりに言葉に出すのです。『あの時計、動かなくなって半年たつんだよ。電池を交換してきて欲しいんだ』と、父は母に懇願をしてその日のうちに母は時計屋さんで電池を交換してきました。父は安心していました。その後父は安心したのか、息を引き取りました。そしてお葬式、いつもはなかなか全員が集まることのない親戚中が集まりました。実家では多くの人を呼ぶことができなかったので、斉場で親戚一同が集まりました。何十年ぶりにあった親戚の叔父や叔母、いとこや兄弟姉妹の親戚たちが集まりましたが、ここ何年か膝の調子が悪く自宅のベッドで一日寝たきりとなっていた父に対しては、皆もいつかはこうなることがわかっていた様子でした。前の日にお通夜があり、翌日がお葬式だったのですが、いざ骨だけになってしまった父の姿を見て、皆が一斉に涙を流し始めたのが印象に残りました。家族全員も皆わかってはいたことなのですが、こうして骨だけの姿になった父を見て涙を流さなかった人はいませんでした。私も父をみながら「無事に天国へ行ってね」と心の中で伝えたとたん、うわーっと感情があふれてきたんです。哀しいという気持ちは当のとっくになくなっていたかと思ったのですが、父の頭蓋骨をしみじみと見たときに涙があふれて止まらなくなりました。骨だけになってしまった姿に。『うわー、私どうしたんだろう」ととっさに私は思いました。何だか、父がここにいるみたい。父が自分の姿を見て泣いているみたいでした。無意識にうわーっと涙が流れてきた瞬間、私は「私もこんなに悲しかったんだな」と改めて父が大好きだったことを感じました。ただ、後悔していることはありました。父の言葉をもう少し理解してあげたらよかったのになと思います。小さいころはよく父と私はケンカばかりしていたので、父が亡くなった後に後悔しました。今なら父の頑固で、口下手だったから怒ってばかりだったんだなということがわかります。皆さんももしご両親に伝えられないことがあるなということがあったら、きちんと話をしておいた方がいいですよ。いろいろな想いはあるかと思いますが、私のように後悔しないでほしいです。
50歳女 お葬式での不思議な体験をしたこと
