トンネルで見た黒い影

今から5年ほど前の出来事です。

私は仕事で岐阜県内にある古いトンネルを車で通ることがありました。

そこは、日中でも薄暗い道で、トンネルに入ると、ライトをつけていなければ、全く周囲が見えなくなる場所です。

人通りは少なく、すれ違う車もほとんどない状況でした。

時間帯は、夕方から夜にかけてですが、夏場であったので多少空は明るい状態でした。

トンネルに入りしばらく進むと、ふと人影のようなものが見えてきました。

道幅が狭くスピードは落として走行していましたが、まさか人が歩いているとは思いませんでした。

少しびっくりしながらも、さらにスピードを落としてその人影の横を通り過ぎようとしました。

しかしながら、いつまで経ってもその人影に追いつくことができません。

人影は真っ黒で服装や性別、年齢など一切わかりません。

私は少し焦りながらも、「ヘッドライトに落ち葉か何かがくっついて、影絵のようにトンネルの壁面に映っているだけかも・・・」と自分に言い聞かせつつも、背筋に少し冷たい物を感じていました。

結局トンネルを出るまでに人影を追い越すことはなく、そのまま出口までたどり着きました。

出口を出ると人影らしきものは全く見えなくなりました。

「あれはいったい何だったんだろうか?」と不思議に思いながらも、無事仕事場へたどり着きました。

その日は何も起こらず、その出来事を誰にも話すことなく、家路につきました。

その夜のことです。

私は何か息苦しさを感じて、夜中に目を覚ましました。

すると、部屋の中にトンネルで見た人影と同じような影が見えるではありませんか!
私は思わず「あっ!」と叫んでしまいました。

その瞬間、その黒い影は煙のように消え去ってしまいました。

気のせいだと思いながらも、薄気味悪さを感じた私は、夏場であるにも関わらず、布団を頭まで被って朝まで寝たことを覚えています。

翌朝の事です。

私は、目を覚ますと、夜中の出来事はたぶん夢か気のせいだったのだろうと思いつつも、やけに記憶がはっきりしていることを自覚していました。

そして洗面台で鏡を見た時、私は思わず目を疑いました。

首のあたりに人間の手のような跡が赤くくっきりとついていたのです。

その後仕事場に行くと私の首の跡を見た同僚から、「どうした、彼女に激しくされたのか?」と冗談交じりに聞かれました。

私は真顔で同僚に一連の出来事を話すと、最初はニヤニヤしながら聞いていた同僚も真剣な表情に変わり、「あのトンネルは上がお墓になっているから、通らない方がいいよ」と教えてくれました。

同僚は、トンネルがある地域の出身でした。

私はいろいろと聞きたかったのですが、あまり詳しくは語りたがらず、ただ「通らない方がよい」とだけ釘をさしていきました。

その出来事以降、私の周りで不思議な体験はありませんが、あのトンネルだけはずっと通らないようにしています。