鳥居の願い事

私の住んでいた町は、海と山の自然に囲まれていましたが、交通の便が良かったり、それなりにお店があったり、そこまで不便な町ではありませんでした。

小学生の頃、私は帰り道を気まぐれに変えていました。

神社のある方を通ったり、公民館のある方を通ったり、ガチャポンの機械が設置してある駅の前を通ったりと、特にルートを決めずに帰っていました。

あれは、私がまだ小学校3年生だった頃の体験です。

神社の北側にある鳥居の上に石を乗せたら願い事が叶うという噂が流れました。

気になって、帰りに神社を通って確認すると確かに鳥居の上には小石がまばらに乗っていました。

その時、特に願い事があったわけではありませんが、これくらいなら私にも出来るだろうと思い、私はランドセルを置いて石投げに挑戦しました。

特に大変な事思いもせずに、小石は思いのほかあっさり鳥居の上に乗りました。

特に何も考えていなかった私はとっさに「元気で長生きできますように」と頭に浮かべました。

それから、半年も経たない内にささやかですが不思議な体験をしました。

何となく公民館のある方の道から帰っていた時です。

公民館の前には押しボタン式の信号があり、歩行者の待ち時間は長くて少しだるい所です。

ようやく歩行者用の信号が青になったので歩いて渡ろうとすると、突然私の頭に小さな虫の大群が下りてきました。

気持ち悪さとうっとおしさで、私は信号を渡らずにその場で虫たちを払うために必死で頭を振ります。

すると、車道側の信号は赤にも関わらず車が猛スピードで横切って行きました。

それを認識して、虫を払う事も忘れ、私はぞっとしました。

もし、虫を払わずにそのまま渡っていたら、私は今頃痛い思いをしていただろう。

想像すると恐怖がどんどん沸いてきて、私はしばらく呆然として信号を渡りませんでした。

もしいつも通りに渡っていたとしたら。

と考えると、今でも少し怖いなと思っています。

鳥居の横の少し離れたところには共同墓地がありました。

もしかしたら、そこに眠っている誰かが私の願い事を聞いてくれたのかもしれないなと思いました。